彼女の車が車検を迎えるので、町田の車屋さんに持っていった。

帰りは電車なので最寄り駅は南町田。
長津田で横浜線に乗り換えて中山で地下鉄に乗り換える。
だがせっかくここまで来たからということで、長津田から逆方向の町田に向かった。

もう7・8年前になるだろうか、一時期JR町田の駅前に住んでいた事がある。

厚木出身の私は、幼いころ、なにかというと町田まで買い物に来た記憶がある。
そのころの厚木にはろくにスーパーも無かったが、町田には大丸があったからだ。
その頃、厚木に冷房があったのは銀行くらいだったと思う。
夏になると銀行か町田の大丸か小田急に涼みに行った、わずか三十五・六年前の事だ。

厚木からみると、横浜より町田や新宿の方が身近な存在だった。
三つ子の魂というが、私にとっての町田は、一番近い都会だった。

まさかその町田に住むことになるとは思わなかった。
町田の印象は、正直言ってガラが良いとはいえない。
(駅裏のラブホテル街の入り口に住んでいたこともあるが)
がだ、裏表のない正直な街なのだと思う。

町田に住んでいた頃、買い物で訪れた港北ニュータウンを見て、
こんな整然とした街に住んでみたいものだと思った。
まさかその後港北ニュータウンに住むことになるとは思わなかったが、
住んでみて思うのは、整然としているのは町並みだけだということだ。
一見高級な街に思えるが、たとえば、売っている商品に良い物は少ない。
(値段の事ではありません)

JR町田駅近くのビルに当時よく行ったインドカレーの店がある。
若者向けの衣料品店が多いビルに少々似つかわしくない雰囲気のせいか、
当時はお昼時でも空いていた。
久しぶりに行ってみると、インド人の店員さんが迎えてくれるところも変わっていない。
大きなまま提供されていたナンが半分に切られて、食べやすくなっていいたりと、
多少の変化はあるが、味は当時と変わらない。
ここのカレーは、キーマやチキンは問題ないが、
マトンや野菜は、十分にマトンや野菜なので注意が必要だ。
お行儀の良いラムや、青臭さを失った野菜を食べ慣れていると面食らうだろう。

もう一つ、懐かしい再会があった。
トミーフィルフィガーだ。
当時、トミーフィルフィガーが好きだった私は、町田に店があったことを幸いに、良く通い、散財もした。
今の街にもトミーはあるのだが、
いつの間にかポップになったデザインに違和感があり、足が遠のいてしまった。
久しぶりにのぞいてみた町田のトミーは、ポップ感が影を潜め、トラッドさと派手さのバランスが昔のようだった。
店員さんと話が弾んだこともあり、本当に久しぶりに洋服を買った。

「これは腹が目立たないね」
「これはもっと目立ちませんよ」
「そ、そうですか・・・」

「もうトミーが着られる年ではないとも思うのだけど」
「お客様ぐらいのお年の方にこそ着ていただきたいです」
「そ、そうですか・・・」

・・・今思うと所々ずいぶん失礼な人だったかも知れない。


これまでも幾つかの街で暮らしてきたが、
町田は住んでいる頃よりも、後になって良かったなと思う面白い街だ。